ウッドストックの森からふるさとのあなたへ:岡大の教室から始まるラブストーリー

 米ニューヨーク州ウッドストックの森に暮らす岡山県出身の作家・小手鞠(こでまり)るいさんが、ふるさとの読者に向けてつづるコラム。1月に出たばかりの最新作は、岡山大学の講座がきっかけになった純愛ストーリー。これまで数々の恋愛小説を生み出してきた小手鞠さんが、自分の気持ちを伝えるためのとっておきの秘けつについて教えてくれました。

岡大の教室から始まるラブストーリー

空も野原も池も赤く染まって、まるで恋する女の子の胸の中を思わせるような森の夕焼け。仕事が恋人の私は「きょうも一日、よくがんばったね」と、褒められているような気分になります

 爽やかで爽やかでせつなくて、胸がキュンキュンする小説なんて、私にはもう書けないと思っていたのですが、書き始めてみたら(年がいもなく?)夢中になってしまいました。思い返せば『エンキョリレンアイ』以来、なんと15年ぶりの純愛小説ができあがりました!

 タイトルは『ラストは初めから決まっていた』。舞台は、岡山大学のキャンパスと文学部の教室。ここ数年、隔年でお邪魔している岡山大学の夏期講座で、学生たちと一緒に「小説の書き方」について考えたり、話し合ったりした経験をもとにして創作しました。

 恋をする、ということと、文章を書く、ということには、実は切っても切れない関係があります。恋はまず、自分の気持ちを相手に伝えるところから始まりますね。気持ちを伝えるためには、手紙を書く、つまり、文章を書くのがいちばんいい。口頭ではなくて文章で、話し言葉ではなくて書き言葉で「好き」という気持ちを伝えるのです。

 書くことによって、自分の気持ちを確かめることができます。相手の気持ちではなくて、まず自分の気持ちを確かめるのです。相手を目の前にしていたら言えないようなことでも、手紙なら言えるはず。と、ここまで書いて、これは読者の方から届いたおたよりへのお返事になっているかもしれないと思いました。

【子どもの頃から奥手なタイプで、他人の良い所も直して欲しい所も言えずにいます。相手との関係がギクシャクしても問えないまま、いつも過ごしてしまいます。自分が傷つくのが怖いからなのですが、話をする勇気の持ち方を教えて下さい。岡山市北区・38歳女性】

 無理に話をしなくてもいいのです。手紙を書いてください。

【どうしたら両思いになれますか? 東京都大田区・40歳女性】 

 絶対に両思いになれるという保証はできませんが、手紙を書いてみてください。お返事が届けば、その可能性は高いと思います。
 手紙はひとりきりでしか書けません。ひとりになって冷静に、自分の気持ちと相手への思いを見つめてみる。それを言葉でつづっていく。そのような時間の中で、恋は静かに実っていくのです。

岡山の風景探しも楽しい! 最新作

 今月の一冊は『ラストは初めから決まっていた』(ポプラ社、1760円)。岡大をはじめ、主人公が住む表町商店街、旭川…私のお気に入りの「岡山」がいろいろ出てきます。人気漫画家の今日マチ子さんが描いてくださった表紙カバーの烏城にご注目! 裏表紙と合わせて見ると、ひとつのストーリーが浮かび上がってきます。

さりお 2021年2月5日号掲載

報告する