

スペシャルティコーヒー専門店店主・藤原京華さんと一緒に、コーヒーからつながる「幸せ」について考えてみませんか。10月1日は、コーヒーの日。瀬戸内沿岸部で始まったコーヒー農園事業を紹介します。
イラスト・藤原京華さん
瀬戸内で、夢のコーヒー農園事業がスタート!
今年、瀬戸内海に浮かぶ大芝島(東広島市安芸津町)と呉市、三原市に、本州では珍しい「コーヒー農園」が誕生しました。中心人物は広島市の老舗コーヒー店「ニシナ屋珈琲」の社長で、中国コーヒー商工組合の理事長でもある新谷隆一さん。瀬戸内にコーヒー農園をつくりたいという長年の夢を、多くの方の協力とともに実現しました。

大芝島はビワやミカンの栽培が盛んでしたが、高齢化等により近年使われず荒れ放題だったビニールハウスを借り受け、整備し、今年5月にコーヒーの苗を200本植えました。その苗は、「岡山バナナ」と同じ凍結解凍覚醒法によるもの。今回の苗はアラビカ種のティピカというおいしいコーヒーの希少な品種です。
コーヒーの名産地は赤道直下の熱帯の国々。瀬戸内海沿岸も温暖とはいえ、環境が大きく違います。そこで、ビニールハウス内をシェードで覆い、優しい日陰を作って夏の厳しい日差しを和らげています。熱帯地方でもコーヒーは直射日光でなく、「シェードツリー」といい高木の下の日陰で育てます。ハウスでも暑くなりすぎないように、センサーで温度管理し、扇風機で空気を循環。冬場は寒さをしのぐため、ボイラーでハウス内を暖めます。

5月に植えた苗は倍の高さの60cmほどに成長
赤道直下の国と日本では存在する虫も違い、病害への対策も悩むところ。日本に合うコーヒーの品種、育成方法…何もかも日本での前例がないので、試してみるほかない。露地にも数本植え、受粉のためのミツバチの巣箱も。今後、品種もいろいろ植え、どれが強いか、何がここに合うのか、実験と挑戦が続きます。
「農業で稼げないと後継者は出ない。効率よく収穫量を上げる、いいものをつくれば相応な価格で売れる、そうでないと農業をしようと思う人はでない。夢だけではなく、継続する事業の先例をつくり広めていきたい」と農園の仲間と語る新谷さん。
コロナ禍で、食料を輸入に頼ることの危険性がますます明確になり、国内の農業がいかに必要か、改めて気付いた人も多いでしょう。日本のように豊かな土壌と水、温暖な気候の、恵まれた土地は世界でも限られています。その土地を商売にならないから、と放棄せざるを得ない現在のシステムに危機を感じます。運搬エネルギーとコストがかかっているのになぜか安い輸入品に頼っている間に、日本の農地は海外資本の手に渡っているかもしれません。
コーヒーは、5年目以降が本来の収穫量を見込める樹齢。私たちも瀬戸内産のコーヒーを飲むことを夢見ながら、日本の農業を育てる思いで、毎日の食材を選びたいもの。それは将来の自分たち自身、子どもたちのために必要なことなのです。
「10月1日 はコーヒーの日」記念
さりお読者限定プレゼント
世界一の生産国ブラジルで収穫が終わり新豆が出回る節目から、10/1が世界のコーヒーの日と定められました。
吉備の国珈琲では、10/1(金)まで、来店して、「さりお見た」と伝えると、HAPPYブレンドドリップバッグを1組に1つプレゼント。おいしいひとときを味わって。

藤原 京華(けいか)さん
スペシャルティコーヒー専門店「吉備の国珈琲焙煎所」(岡山市北区表町1-7-15・1F)店主。中国コーヒー商工組合 事務局長。
http://kibinokuni.a-zone-t.net/
さりお 2021年9月24日号掲載
- 店舗名
- 吉備の国珈琲焙煎所
- 店舗住所
- 岡山市北区表町1-7-15