「かわいい不良」だった高校時代のお話

 米ニューヨーク州ウッドストックの森に暮らす岡山県出身の作家・小手鞠(こでまり)るいさんが、ふるさとの読者に向けてつづるコラム。今回は、岡山で伸び伸びと過ごした青春時代の思い出を教えてくれました。

「かわいい不良」だった高校時代のお話

▲アメリカのバレンタインズ・デイは、男(夫)から女(妻)に薔薇(ばら)の花束を贈って、食事に誘うのが一般的。義理チョコは贈りません。本当にスウィートな恋人たち、そして、夫婦の愛の日なのです

 今回ご紹介するおたよりは31歳の方から。

 【いつもコラムを楽しみにしています。桃が流れてきたという笹ヶ瀬川のほとりで育ち、朝日高校に進学しました。文章を書くのが大好きで、朝日でも勉強せずに本ばかり読んでいました。そんな日々が懐かしいです】

 これってまるで「私」のことじゃないですか! 笹ヶ瀬川のほとりで育った私も、中山中学校を卒業したあと、岡山県立岡山朝日高校に進学しました。文章を書くのが大好きで、勉強もせずに…もそっくりです。うれしくなってしまいました。

 そんなわけで、今回は高校時代のお話を。実は私は、朝日高校に進学したかったわけではありません。私の世代の場合、県立高校の普通科に進みたい人は、共通の試験を受けて、3校(朝日、操山、大安寺)のうち、どこかに、振り分けられるようになっていたのです。

 私の家からだと、大安寺に行くのが最も便利だったのですが、最も不便な場所にある朝日に振り分けられたときには、正直、うんざり。バスだと、乗り換えながら1時間以上。おまけに朝はすし詰めの満員。そこで私は自転車通学をすることに。しかし、これがまたまた大変だった。雨の日はかっぱを来て通学するんですよ。苦労したなぁ。

 で、高校時代の私は、しっかりと「不良」をやっていました。勉強はしない、いやな科目はサボる、早弁はする、校則は破る、放課後は演劇部の仲間たちと喫茶店で集まって、悪い相談ばかり(これが楽しかった!)。不良と言っても、かわいいものです。行きつけのお店は、表町商店街にあった天満屋のお好み焼き屋さん。初めてできた彼氏と、烏城や後楽園や半田山植物園や倉敷でデート。楽しかったなぁ。初恋の人、今ごろ、どこで、どうしているかなぁ。

 高3になってからは、京都の大学へ進みたい一心で、懸命に受験勉強に励みました。純真だった中学時代には小説家に憧れていたけれど、高校時代にはひたすら恋愛に憧れていたなぁ。ああ、早く恋人が欲しいって。将来、自分が恋愛小説を書くようになるなんて、想像もしていませんでした。でも、高校時代に羽目を外して、青春を謳歌(おうか)しておいて、よかったと思います。大人になってからは、真面目一筋でがんばってきましたから(ほんとかなぁ)。今度岡山へ帰ったときには、朝日高校を訪ねたいです。あのころの「かわいい不良」に会いたいな。

今月の一冊『女性失格』(文藝春秋)

 昨年の12月に出版された作品です。予想に反して、年配の男性読者からの熱いご支持をいただきました。女性読者の方からは「この主人公は、私です」という声をたくさんいただいています。朝日高校時代、しっかりと不良をやっておいたからこそ、書けた作品です。

さりお2022年2月11日号掲載

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