備前焼の狛犬を生涯かけて守り抜く

備前焼作家 木村玉舟さん


備前焼の狛犬を生涯かけて守り抜く

備前市在住の木村玉舟さんと木村さんが修復した履掛天神宮の狛犬

 「備前六姓細工方宗家十七代目」として備前焼による陶彫を手掛け、白備前作品で知られる木村玉舟(ぎょくしゅう)さん。作品制作以外にも、代々引き継がれてきた伝統技法を駆使し、県内の神社に奉納されている備前焼の狛(こま)犬を無償で修復しています。

 編集部 狛犬の修複を始めたきっかけは?

 木村さん 子どもの頃自宅裏にある履掛(くつかけ)天神宮の境内でよく遊んでいました。お宮には私の祖先が制作した備前焼の狛犬が奉納されていたのですが、当時から体が欠けて壊れてしまっていたんです。修復も難しく、長年放置されていたので、自分が大人になったら直そうと心に決めていました。そして2014年に修復し(写真)、それをきっかけに、吉備津彦神社や阿仁神社など県内5つの神社からも依頼を受け修復をしていきました。

 編 狛犬の修復で大変だったことは?

 木村さん 狛犬の中には顔半分が欠けているものもありました。原型の資料がないため、制作された江戸期の書物で研究し、県内の狛犬は岡山藩の御用絵師だった狩野派が描く表情をしていることが分かりました。その表情と対の狛犬の表情も参考にしながら作っていきました。また、元の体の色と合わせるために、鉄分の多い土を組み合わせるなど原料にもこだわりましたね。

 一番大変なのはサイズ合わせ。窯で焼くと、どうしても収縮してしまうので、原料の配分や比率を変えたテストピースを作成し、試行錯誤を重ねながらピッタリはまるものを制作しています。長いものでは修復に1年掛かりました。

 編 膨大な手間と時間を掛けてまで修復に取り組む思いとは?

 木村さん 備前の狛犬を制作したのは備前六姓(古くから備前焼を制作している6つの窯元の総称)の木村と森です。祖先の作った作品を修復するのは子孫の私の仕事であり、貴重な文化財を後世に残していきたいという気持ちからです。神社や地域の方、そして岡山のために、私は死ぬまで修復を続けていきたいと思っています。

牙、耳、毛並み、足など体の大半を修復したそう。修復の話とともに「狛犬の前歯の数と並びは人間と一緒。関節部分が人の膝のような見た目をしているのは、先人が人をモデルにして架空の生き物を作ったのかもね」と、備前焼の狛犬ならではの面白さやロマンあふれる話を教えてくれました

さりお 2022年5月27日号掲載

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