一度聞いたら忘れられない〝怪異〟語り 人にも呪物にも深い愛情を持った奇人

放送作家・怪奇ユニット「都市ボーイズ」 はやせ やすひろさん


一度聞いたら忘れられない〝怪異〟語り
人にも呪物にも深い愛情を持った奇人

 怖い話や不思議な話などの怪異体験談、いわく付きの人形といった呪物を収集し世に配信している、はやせやすひろさん。放送作家としてオカルト番組の制作に携わりながら、その圧倒的な取材力・構成力で仕上げる〝語り〟や〝動画〟は一度見たら忘れられません…。

【はやせ やすひろ】
津山市出身。津山工業高校卒業。18歳で上京し、芸人のネタ書き、テレビ番組のADを経て放送作家を目指す。2015年に怪奇ユニット「都市ボーイズ」を結成。トークイベントをはじめYouTubeやポッドキャスト配信、テレビや雑誌など多数のメディアに出演。呪物・珍お守りコレクター。緊急検証新人王2015年・2017年優勝、​稲川淳二の怪談グランプリ2017年・2019年優勝、呪物-1グランプリ初代王者。〝オカルト界のプリンス〟の異名を持つ


 編集部 なぜオカルトに興味を持った?

はやせさん 地域の伝承が好きな父が「あそこの山には天狗(てんぐ)が出る」などの話をしてくれていたこと、水木しげるさんの本を読みふけっていたこと、祖母がカッパと戦った話をしてくれたことなど、子どもの頃から妖怪や怪異が身近にあったからでしょうね。
 それに、地元の津山市にはカッパの伝承が残っていて、夏には「ごんごまつり」というカッパをまつるお祭りがあります。僕も学生の頃に、母が作ったカレーを持ってカッパを探しに川へ行ったこともあります。

 編集部 怪異や体験談などを収集・配信する上で心掛けていることは?

はやせさん 主に視聴者らから提供された情報を基に取材をしていますが、電話やメールではなく、基本、現地に行って提供者に直接会って話を聞いています。話だけでなく、その場所の風景や提供者の人柄も含めて伝えられたらと思って。

また、この業界では話を面白くしたり盛ったりすることがありますが、僕は、脚色をしないこと、嘘をつかないことを一番心掛けています。だから僕たちの動画にはあまり大きなオチがない場合が多いんですよね。でもそれが本当の話なんです。
 他には、投稿者が反感を買いそうな内容の場合は、口調荒く悪態をつきながら話すことで「はやせの方がもっと悪くない?」と僕に反感が集まるよう悪役に徹しています。だから「実際に会うと怖くないんですね」ってよく言われます。

 編集部 呪物収集のきっかけとその理由は?

はやせさん ミャンマーで呪いの首飾りを手に入れたのが始まりでした。手に入れたら何かが変わると強く思ったんです。
当時は、呪物というと嫌厭(えん)されることが多かったのですが、漫画「呪術廻戦」が人気になったことで市民権を得ましたね。今では寺や博物館、市町村などからも依頼を受け引き取り約50個ほど所持しています。人形などさまざまですが、どれも本当にかわいくって。
 僕は友達が多い方ではなく、長い間いじめを受けていた時期がありました。だから気持ち悪がられ、遠ざけられる呪物に自分の姿を重ねているところもあります。当時の僕が一番してほしかったのは、横にいて取り合ってくれること。だから呪物には、「はやせの家で最後は仲良く幸せに暮らしました」としてあげたいのが一番の思いです。


【都市ボーイズ】
放送作家の岸本誠(左)と、はやせやすひろによる怪奇ユニット。都市伝説や怪談、オカルト話等を扱い、YouTube「都市ボーイズチャンネル」は登録者数27万人

▼都市ボーイズの公式HPはこちらから
https://www.toshiboys.com/


さりお 2023年2月24日号掲載

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